物の整理整頓は,家庭教育ではありませんか。学校でも指導する必要があるのでしょうか。
【答え】
家庭教育と学校教育との両面から育てることが大切だと考えます。家庭によっては,学習用具と遊び道具とを分ける大切さに気付いていないこともあります。生活時間の大部分を過ごす学校で行うことが,力をつけることに有効なのです。
小学校入門期では,生活習慣も「学習」と捉えて指導することが重要だと考えます。
【なぜ】
子どもは,机の中やロッカーに大人から見ると「ごみ」と思われるようなものを入れておくのが好きです。机の中の道具箱には,鉛筆削りのかす,ばらばらになったホッチキスの針,使用済みのティッシュ,折り紙の作品,はたまた返却したテスト用紙や配布した手紙など,大人から見るとなぜ?と聞き返したくなるような品々が入っているのです。中には,脱いだ靴下や使い終えたハンカチが数枚入っていることもあります。決して珍しいことではありません。
何を持ち,何がいらないのかを子ども自身が考え,把握しようとする習慣や考え方を育てることが重要です。この指導は,ものの管理能力を育てることだけが目的ではありません。これらの指導を通して,子どもの「もの」や「生活」に対する自己自立心が培われるからです。
自分にとって必要なものと必要でないものとを見分ける力。例えば『折り紙はあと何枚残っているから,まだ買わなくてよい。この使い方は無駄だった。次はもっと紙を小さく切ったものを使おう』など生活の仕方により,それに必要と思われるものの量や質を考える力がつくのです。
これら物の管理能力は,家庭教育の問題と考え,指導内容と捉えていない教師も見受けられますが,家庭教育と学校教育との両面から育てることで身につく力だと考えましょう。
学校教育において,教科学習以外の内容は,とかく「家庭の問題」と片づけられがちです。しかも,これらの力が,実は,教科学習における「考える力をつけること」に直結していることに気付いていない教師がいることは,現場の大きな課題です。
小学校入門期でこのような取り組みが行われていると,6年間での学習への取り組みにも大きな違いが生まれ,ついてくる力にも差が出てくるのは当然のことなのです。