忘れ物が多い子どもがいます。指導に困っています。
【答え】
教科書の表紙を使うなど,具体物に近い形の時間割を作り,配布します。
【なぜ】
忘れる原因には二つあります。
一つは入れ忘れの場合です。仕度をする習慣がまだできていないことが原因です。もう一つは,持ち物自体がわからないことが原因です。
幼稚園や保育園での情報は色や絵が中心でしたが,小学校では言語が中心です。大人から見ればさもないことが,子どもにとっては大きなつまずきである場合もあります。「国語をもってきて」と言葉で言われても,具体的なものを見たり自分の持ち物と比べたりしないと,「これだ」が認識できない子どももいます。入門期における子どもの見方や感じ方には,他の学年にはない特徴があります。その特徴を知ることが指導への力となります。
【方法】
まず一つめ。仕度をする習慣をつけるためには,時間を決めることです。保護者の方の手助けが必要ですから,それぞれのご家庭の事情で時間を決めるようお願いします。この取り組みで大事なことは,毎日同じ時間であることです。この点を忘れずにお伝えしましょう。「毎日同じ時間に同じことをする」それが習慣化につながるからです。
習慣が身につくまでには長い時間がかかります。懇談会や家庭訪問などその都度状況を伺い,保護者の方が手助けする日を毎日から,一週間ごと,曜日ごとにするなど,子どもの実態に即して工夫し,一人でできるようになるよう支援を続けましょう。
二つめは,持ち物を知るための支援です。各教科書の表紙は,子どもから見るとどれも同じように見えます。明日は,国語と算数と生活の教科書をもってきましょうと言われても,どの教科書が国語なのかわからない子どももいます。大人から見ると明らかな違いも,子どもにとっては色も模様も絵や写真でも同じように見えます。
ですから,よくわからないのでもってこられないとも考えられます。「違いがわかる」とは高度なことなのです。子どもと一緒に教科書の表紙を見て気がついたことを呟きながら,その教科書の表紙の特徴を共有します。例えば,国語の教科書の表紙は友達が本を読んでいます。算数の教科書の表紙は数字が並んでいます。など色や柄の特徴を「本読み」「123」など,合い言葉にするとよりわかりやすく親しみもわきます。これまで過ごしてきた幼稚園や保育園では,絵や色で示されていた情報が小学校に入学した途端,言語中心になるのです。戸惑うのは当然と考え,一人一人に丁寧に向き合いましょう。