入学式から名簿順での座席です。席替えをしようと思いますが,入門期では,どのように考えたらよいでしょうか。
【答え】
座席は,学習や生活を通して子どもに力をつけ,心を育てる大切な人的環境の一つです。
指導の意図を明確にして,教師が決めましょう。身長や視力,聴力など身体的な配慮を第一に考えましょう。
そして,学習を通して子どもたちにどのような力をつけるのか,特に人間関係を育てることを主眼として考えましょう。
【なぜ】
子どもの育ちは,人間関係で培われていきます。
互いにかかわり合うことで,友達の姿からよいところへの気づきが生まれ,互いに触発し合うことが,よりよい育ちにつながります。
座席は,子ども同士のさまざまなつながりを視覚化する具体的な指導の手立てになるのです。子ども一人一人の特質を見極め,育てたい力や人間関係を考え,座席を工夫しましょう。
【方法】
座席を替えたら,学習環境が変わった例です。
私は,入学式から毎日のように子どもたちに「わからないことはわからないといってよいのですよ。わからないから学校に来ているのだから。」と声をかけていました。
「わからない,これなあに」と疑問をつぶやく子どもと,「それは○○だと思うよ」と自分の思いをつぶやく子ども,二人のつぶやく子どもが生まれてきました。入学後一か月が過ぎたころです。
そこで,つぶやく二人の子どもを核にして学習をつくろうと,二人のつぶやきを問い返しながら課題にしたり,考え合ったりしました。しかし,なかなか全体には広がらず,悩んでいました。
そんな時,二人の座席の周りだけで学習が進んでいるような感じに気づき,思い切って二人の座席を離してみました。一人は廊下側へ,一人は窓側へ。
何もつぶやかない,座っているだけの子どもたちの頭の上を,二人のつぶやきが飛び交います。学習中だけでなく生活面でのつぶやきも取り上げ,全体に広げることを通して,少しずつ他の子どももつぶやきに加わり,5月半ばには,つぶやきが学級全体に広がっていきました。座席を変えただけで,学習環境が大きく変わったのです。子どもたちの変容に学年の先生方も驚かれ,各学級でも取り組みました。
座席は,学習や生活での人的な環境として有効な手立てです。
指導に生きる,指導が生きる座席の工夫をして,子どもたちに力をつけていきましょう。