☆コラム ~入門期の音楽授業を見直す~
指導のゴールは「音楽を好きになること」です。先生も一緒に活動していますか。
「先生も音楽が大好きです」と,楽しんでいる姿は,何よりも子どもの意欲の原動力になります。
○歌声は「笑顔で明るく」を目ざします。「大きな声で元気よく」は禁句!です。
⇒話す声と歌う声との違いに気づかせます。
子どもは自分だけの声を聴いてもらいたくて,力いっぱい声を出します。ここでは,歌う声に気づかせ,意識化を図ります。指導の言葉かけは,歌声に大きく影響するので工夫しましょう。
音楽の先生は「自分の耳」です。自分の声を自分で聴く習慣も育てます。
○つけたい力は一つ。活動は多様化してもつけたい力が「ぶれない」こと
⇒例) 音高感を育てる指導「きらきら星」を教材に使っての例
活動は,まず拍打ちして曲を知る。リズム打ちして,リズムや休符に気づく。歌詞で歌う。
音高を表す約束を決める。
ドはおへそ。ソは額など。基点を二つぐらい決めて,あとはその間で高い音や低い音がわかればよいのです。一音ずつ決めてしまうと,音の位置を覚えることや見て真似することに追われ,返って音高を聴くことが不十分になります。これでは本末転倒です。
手で音高を表す。
先生と一緒に,音楽に合わせて全員や列ごとなど交代で繰り返し,表現します。ときには,一人で表現させることも大事です。
歌グループ(階名で歌う)と,手で表現するグループに分かれて表現するなど,常に歌と一緒に音高表現することが大切です。
階名視唱する。
拡大楽譜を活用して,見て歌うことを大切にします。視覚でも音高を確かめることができるからです。
○何をするのかが,わかりやすいこと
⇒「何のために」「どのような活動をするのか」を指導します。
拍打ちは,音楽全体の感じをつかむ活動にも使います。一定の速さと強さで打ちます。
例) どんな音楽かな。音楽に合わせて,拍打ちをしましょう。
○音を聴いて歌うことを習慣化すること
⇒できるだけ旋律を弾きましょう。
CDなどの音源は,曲全体の感じをつかむ活動では有効ですが,その中から旋律やリズムを聴き取ることは思いのほか難しいものです。伴奏入りの音源だけを聴いていると旋律があいまいな歌になり,学習での満足は得られません。
○拡大楽譜は教科書と同じものを使います。
⇒歌詞だけでは意味がありません。子どもは,教科書と違うものが提示されると,それらを比較して受け止めることができません。何を見てよいのかわからず,学習から離れてしまうことも少なくありません。
絵譜や歌詞,さし絵など,紙面全体で「音楽」が提示されています。音楽は音とともにあることを視覚からも育てます。
○拡大楽譜を活用する意味
⇒指導の定着を図ることができます。
今,どの部分の何を指導されているのかが,全員にわかります。
音楽の教科書は,他の教科書に比べて見慣れない紙面です。子どもだけで教科書を見ていると,何をどのように見るのか,どの部分の話をされているのかが,わかりません。「○○を指でさして」と声をかけると,半分ぐらいの子どもは「どこどこ?」と,隣の友達の顔を覗き込み,周りをきょろきょろ。学習内容以前に「どこなのか」わからないのです。なかには,音楽が苦手な子どももいます。学習のハードルは厳選します。
○環境を整える
⇒安全に豊かに活動できる場所をつくります。
音楽に合わせて歩くなど身体表現をする場合は,特に,机やいすを片付け,安全な場づくりを心がけます。
また,活動が途切れないよう,機器の配置と教師の動線を見通します。学習
が深まり,「さあ,歌いましょう」という段になって,オルガンの電源が入っていなかったりして間が空くと,もう子どもたちの意欲は,さっとひいてしまいます。ざわざわし始め,もとの空気に戻せなくなります。準備は念入りにしましょう。