Q2.「スタートカリキュラム」ってなんでしょうか。
Answer
「スタートカリキュラム」について理解を深めましょう
「スタートカリキュラム」は「学び」の潤滑油です
①でお示ししたように入学前の「学び」を,リセットすることなく,新1年生が「主体的に自己を発揮しながら学びに向かうことが可能となるようにする」(小学校学習指導要領第1章総則 第2の4学校段階間の接続)ことができるようにすることが,1年生担任として入学の時期に目ざすことです。
しかし,「何でも子どもに尋ねながらでは,計画が立たない」「小学校には小学校として教えることがあるのに」などと考えるのは当然です。
そこで行うのが,次にお示しする「スタートカリキュラム」です。今回の学習指導要領では,「小学校の入学当初においては,幼児期の遊びを通じた総合的な指導を通じて育まれてきたことが,各教科等における学習に円滑に接続されるよう,スタートカリキュラムを(中略)編成し,その中で,生活科を中心に,合科的・関連的な指導や弾力的な時間割の設定など,指導の工夫や指導計画の作成を行うことが求められる。」(小学校学習指導要領解説総則編 第3章第2節学校段階間の接続)と示されています。つまり,全ての学校で,「スタートカリキュラム」を「幼児期の終わりまでの育ってほしい姿」を踏まえ作成し,実施することが「必須」となっています。
まだまだ浸透しきれていない「スタートカリキュラム」
「スタートカリキュラム」。この言葉が使われたのは10年前の「小学校学習指導要領解説 生活編」です。10年といえば,生まれたばかりの赤ちゃんが小学校の中学年になるまでの年月であり,決して短い期間ではありません。しかし,この10年間でスタートカリキュラムは,正しく理解され,どこの学校でも行われるようになったのかというと,「NO」と言わざるを得ません。一昨年度まで,指導教諭という立場で授業を公開し,研修会を行ってきましたが,年度初めの研修会で「スタートカリキュラムを実施していますか」と問うと,「始めたばかりです。」「あまり自信ないのですが。」と言いながらも「実施している」と回答するのは2割から半数程度で,「初めて聞きました。やってみたいです。」という参加者も珍しくありません。さらには,学習指導要領で初めて使われた「スタートカリキュラム」に関わる文言が,「幼児教育との接続の観点から(中略)特に,学校生活への適応が図られるよう,合科的な指導を行うことなどの工夫により第1学年入学当初のカリキュラムをスタートカリキュラムとして改善すること」(第1章 3生活科改訂の要点)というところから,小1プロブレムなど,「学校生活への適応を図ることが難しい児童の実態」への対応策,つまり,「適応指導」であると未だに理解されている節もあります。
「スタートカリキュラム」は「適応指導」ではありません
小学校の生活や学習に上手に適応していくための指導は必要です。でもそれが目的ではなく,「学び」をつなぐための入学時期のカリキュラムであることを理解してください。各学校で,学校教育目標等自校で育てたい子どもの姿を確認し,教育内容の組織的な関連を図ってデザインし,小学校の入り口に当たる約1か月を,スタートカリキュラムとして校内全体で共有することで,今求められる「学校カリキュラム」作りへの弾みにもなります。具体的な手順は,以下を参考にするとよいでしょう。
①幼児期の発達や学びを理解する ②期待する児童の姿を共有する ③各学校のスタートカリキュラムをデザインする(単元の構成と配列 週の計画と時間配分) ※「発達や学びをつなぐスタートカリキュラム」平成30年4月 文部科学省 学而出版 |
また「スタートカリキュラム スタートブック」(国立教育政策研究所 平成27年2月)は,スタートカリキュラムの理念を理解するうえで,ぜひ参考にするとよいと思います。