朝の会で歌っていますか。~学級経営に生きる音楽科の取り組み~
歌を歌うことのよさは,歌うことで仲間意識が高揚し,学級全員に一体感が生まれることです。
No.52でも触れましたが,学級指導の重要なカギは人間関係づくりであり,子どもどうしの横の糸を太く紡ぐことです。一緒に取り組むと,自分も仲間であると実感すると共に,一つのゴールを目ざして取り組むことで互いの心が紡がれ,子どもどうしの横の糸が太く紡がれていきます。学級としての一体感が生まれるのです。
特に低学年では体を通して活動することで,一体感を実感することができます。活動は多様にありますが,歌を歌うことは,いつでも,どこでも,誰とでもすぐに始められる活動です。学級全員で同じ曲を歌うと,「歌うことができた。」という達成感を味わうことができます。その気持ちが「一緒に取り組んだ」という一体感を生み出します。しかも歌うことは,声を出し,言葉を発することで気持ちをも表出できます。
さらによいことがあります。学級で歌うことは,友達との一体感は勿論,先生との一体感が味わえる,入門期の子どもにとって大きな喜びを実感できるのです。
子どもにとって先生は,学校にいるときの心のよりどころです。誰もが先生に自分を見て欲しい,自分に声をかけて欲しいと願っています。話している友達を押しのけて,割り込んで話したり,わざと物を落として気を引いたりなど,先生方ならどなたでも思い当たることでしょう。その先生と一緒に歌えるのです。先生との距離がぐっと近づきます。子どもは大喜びです。
このように先生と一緒に友達と一緒に声を合わせて歌うことは,学級の中で安心して自分を表出することができ,友達と心が紡がれ,先生との距離をも縮めてくれて一体感を味わうことができるなど,多くのよさがあるのです。
ではなぜ,朝なのでしょう。
歌は,「安心」「気持ちよい」という空気を子どもの心にも,教室内にもつくります。大きな言い方ですが「さあ,頑張ろう」と起爆剤にもなります。大人でも音楽を聴いたり,歌ったりしながら取り組むと,仕事がはかどるという声を聴きます。自分の教室で友達や先生と一緒に歌うのです。気持ちよくないはずがありません。ですから朝一番に歌うことが,有効なのです。
ここで一つ,気をつけたいことがあります。それは,歌が得意でない子どもへの配慮です。歌う経験が少ない子どもは,特に歌うことに抵抗を感じることもあります。そこで先生が一緒に歌うと,安心して歌うようになります。先生も照れくさいかもしれませんが,歌は技能ではなく,楽しそうに歌う先生の姿が子どもにとって重要なのです。
「歌うことは,心に寄り添うこと」と考え,取り組んでみてください。担任の先生が伴奏してくれることは,子どもにとってとてもうれしいことですが,CDの伴奏で十分です。大いに活用しましょう。