☆コラム 一年生の指導も半年を過ぎました。今後の指導を充実させる方法を考えます。
前回,学習発表会への取り組みとして「短期決戦・工夫の山・結果を出す」の三つの合い言葉を提案しました。
⇒【学習活動】カテゴリー「学習発表会や音楽会など,学習の成果を発表する場があります。指導するうえで気をつけることは何ですか」参照
実はこの合い言葉は「指導の合い言葉」でもあるのです。例えば,「短期決戦」とは「担任している期間」,「工夫の山」とは「授業における指導の工夫」,「結果を出す」とはついた力が「姿に見える」ことと考えます。では,具体的に子どもの姿から考えてみます。
入学して半年がたちました。この時期は学習発表会や運動会,音楽会,遠足などさまざまな行事があります。日頃の授業と共に,これらの行事を通して力をつける指導に取り組んでいることでしょう。
子どもたちは入学当初と比べてどれくらい成長してきたでしょうか。一人一人の成長に違いはありますが,これまでの指導の「結果」が見えてきていますか。この時期になると,子どもたちは一年生でも自分なりに頑張ろうとする気持ちが高まってきます。それに伴い学習への取り組みも,意欲的で目に見えて力もついてきているのではないでしょうか。
この時期にこそ,一年間の指導を見直しておくことが重要だと考えます。なぜならここからの半年間は,加速度的に指導する内容も増え,一年生としての力がグンと伸びる時期で,これまで以上に指導の充実が求められる期間だと考えるからです。
入門期は他の学年と違い,入門期特有の指導があります。気がつくと夏休みを終え,秋になると行事に追われ,あっという間に一年間が過ぎてしまいます。しかし,指導の結果は一年間で出さなければならないのです。以前,保護者の方からは「年度初めに多くの夢を描き期待しながら一年間見守ってきてが,鉛筆の持ち方さえできるようになっていない。」という厳しい声も聴かれました。
教育は,結果が見えるようになるには時間がかかると言われています。しかし,時代は変わり,社会はめまぐるしく変化しています。以前のように結果が見えるのはずっと後だから,担任している期間に結果が見えなくても仕方ないなどと言ってはいられないのです。むしろ,めまぐるしく変わる現在の社会だからこそ,「短期決戦」「結果を出す」ことが求められているのだと考えます。
ではどのようにすると「結果を出す」ことができるのでしょう。
その答えは一つ「日々の授業を充実させる」ことだけなのです。充実とは,力をつけるために,どの内容ももらさずきめ細やかに指導を積み重ねることと考えています。
学習発表会や運動会で結果を出すには,授業の積み重ね以外の何ものでもないのです。もちろん発表会等での取り組みは,学習の発展ですから求められる力にも違いはあります。しかし,どの取り組みでも求められる力の基は「授業」で培われるのです。教師は授業で勝負する,若い頃よく言われました。言葉通りであることを実感しています。
毎日の授業はとても地味な取り組みです。運動会や学習発表会のように結果(=力をつけた姿)が,多くの人の目にふれることもなく賞賛もありません。結果について先生自身が緊張感をもって授業への自己評価を続けない限り,「結果がついてきているか」はわからないのです。年度末になって慌てても間に合わないのです。ですから,日々の授業の充実が重要なのです。日々の授業が充実していれば,おのずと結果は「子どもの姿」として見えてくるからです。
具体的な例で考えてみましょう。例えば「話す力」の指導。入学式に「はいと返事をする」ことから指導を始め,みんなに聴こえる声の大きさで返事をする指導をします。まずは学級全員の前で声を出す力をつけることを目ざします。音読など他の内容でも指導を続けますが,どれくらい丁寧に指導したでしょうか。
入門期には,「はっきり発音する」指導があります。「あ・い・う・え・お」と一語ずつ口形の違いを意識して発音しているかを見取り,口の開け方を指導します。この内容は教えなくてもできるから,指導しなくても大丈夫,と思われるのか,指導を見逃したり,少しだけの指導に終わったりで力をつけることへの意識は高いとは言えません。
しかし,ここを丁寧に指導すると,話し方も声の出し方も大きく変わってきます。口をあけることで声が前に出ます。口形を変えることで発音が明確になり,言葉が聞こえやすくなります。口の開け方や口形を意識すると表情が豊かになり,不思議と笑顔が増えます。口角がよく動くからでしょうか。話し方まであたたかくなるように感じます。声を出すこと,話すことが楽しくなります。そして,今度は何を話そうか,学習への意欲が高まってくるのです。
このようにあまり指導を要しないように思える内容は,見逃されがちですが授業には毎時間つけたい力があり,その積み重ねが次の指導へとつながるのです。ですから,どの指導がどの内容の力をつけることにつながるかを考え,日々の授業を充実させることが重要なのです。
最後に「工夫の山」ですが,これは一人一人がわかる・できるが実感できるようにするための「授業の工夫」です。しかも「山」ですから,多面的に多様な工夫を考えることが大切です。別項の写真の活用も発音指導の工夫の一つです。機器の活用も有効です。
「結果を出す」ために授業の充実を図り,実りある年度末を迎えたいですね。