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第10回  架け橋になろう

 大学においても,発達障害の学生への配慮は必須になっています。加えて,鬱(うつ)やパニック障害への配慮,更にはLGBTに対する理解,本当は当たり前にあってほしいあれこれを,改めて啓発することが増えています。

まずは,自らが理解することが一番重要です。大学の先生は頭がいいので,自分の知識に自信を持っているタイプと,常に新しいことを取り入れようとするタイプに分かれると思っています。前者は,実に厄介です。例えば,女子学生が「異性にあまり興味がない」などと言うと,
「男にもてなくてレズになったか?」
 といきなりデリカシーのないことを言い出します。彼女は学習障害の診断を受けているので,配慮をお願いします,との要請にもかかわらず,本人に向かって,「はよ治せ」ということが,配慮だと思っています。こう言う人に理解してもらうのは,本当に難しいことです。

 教育者である限り,自分が理解するだけではいけません。理解者として当事者と向き合うだけではなく,彼や彼女を周囲の人と結ぶ,架け橋の役割を果たす必要が出てくることもあります。

 以前にも書いたように,誰もが他者と関わることを望んでいるわけではありません。友達がいなくても平気,むしろ一人が好きな子どももいます。そんな子どもでも,クラスにいる限りは,誰かと関わらなければ,授業も行事もクリアできません。架け橋が必要になるのは,そういうときです。

 こちらも繰り返しになりますが,このようなとき,一番してはいけないのは,「◯◯さん係」を指名することです。充分なアフターフォローをしているつもりでも,指名された側は,責任を押し付けられたとの印象を持つ可能性があります。

 実際にそういう印象を持ったことがありました。中学生時代,私自身がそういった立場に立たされたときに。昭和のころの話ですから,「おまえ見込んで頼んだるわ」といった上から見下ろす視線を感じたのも釈然としませんでした。そのときの先生に対する思いを忘れないように,と胆に銘じています。
「自分でやれや」。
先生は当然のようにおっしゃいました。
「俺がずっと見とるわけにもいかんで頼むわ」
 こっちだって,ずっと見とるわけにはいかんわ。

 どんなにしっかりしていても子どもは子どもです。コミュニケーションの技術は,大人の方が優れていて然るべきです。どのように接したら良いかわからない子どもがいたら,コミュニケーションのコツを,簡単にまとめて伝えられるようにします。「ゆっくり話して」「後ろから声をかけないで」。好意を上手く伝えられないこともあります。代わって伝えてあげましょう。

 先生だって,苦手な児童や生徒はいます。でも,苦手な理由が発達障害というのは勿体無い。誤解を解けば,好きになれるかもしれないから。まずは,理解への努力をお願いします。

LGBT・・・性的マイノリティを示す,現時点における最も一般的呼称である。

堀田あけみ先生

堀田 あけみ

1964年 愛知県生まれ。
1981年,『1980アイコ十六歳』で文芸賞を受賞,文筆活動に入る。
その後,名古屋大学教育学部に入学,卒業後,同大学院教育心理学科に進学。専攻は,発達心理学・学習心理学。特に,言語の理解および産出のプロセス。
現在,椙山女学園大学教授。
また,NPO法人アスペ・エルデの会で,発達障がい児の支援も行っている。
その多方面にわたる活躍は,2012年10月から翌年の1月にかけて,朝日新聞愛知県版で40回にわたる連載で紹介された。

◆著書◆
『わかってもらえないと感じたときに読む本』『おとうさんの作り方』(海竜社)
『十歳の気持ち』(佼成出版社)
『発達障害だって大丈夫 自閉症の子を育てる幸せ』(河出書房新社)ほか多数


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