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第4回 友達ってなんだろう

 発達障害の特徴の一つとして,人との関係を持ちにくい,というのがあります。友達ができないことに,悩む子どもも多くいます。
 その一方で, 友達がどうしても必要なわけではないタイプの子どももいます。気の合う人がいたら,それは楽しいし,一緒にいたいと思うでしょう。でも,そういう人がいないときに,一人でいるのが苦にならなかったり,そういう人とは四六時中一緒にいたいと思わなかったりする子どももいるということです。

 以前,発達障害の子どものためのお料理教室を不定期に開催していました。午前中は,親子クッキング,午後には,子どもはレクリエーション,親は懇談会です。そのときに,娘さんを持つお母さんがこんなお話をしてくださいました。

 小学校高学年になった娘さんが,学校に行きたくないと言い出したそうです。お母さんは説得にかかります。当然の流れです。
 行きたくないなら,今日はお家にいようか,と言うのも一つの手ですが,それはここではおいておきましょう。
 娘さんの気が変わりそうにないので,ついにお母さんがきれました。
 それで,物事が好転することはありません。でも,お母さんだって辛いのです。これは責められません。
「じゃあ,もう学校なんて一生行かなくていい! 友達だって作らなくていい! 好きなだけ家にいればいいでしょう!」
 その言葉で娘さんは笑顔になったそうです。
「え,いいの? 友達作らなくていいの? だったら学校行く。楽勝」

 彼女にとっての重荷は,友達を作らなければいけない周囲の雰囲気でした。先生から繰り返し「お友達できた?」と尋ねられ,休み時間に一人でいると,ときには「友達」をあてがわれる。一人で静かに過ごしたいのに。「友達役」を演じさせられる子どもにとっても辛いことです。

 もちろん,友達が欲しいのに上手く作れない子どももいます。そんなときには,先生が架け橋になるべきでしょうか。私はそうは思いません。架け橋になるべきは,別のとき,別の シチュエーションで,です。まずは,先生自身が「友達」になってはいかがでしょう。
 誰かに「友達」を演じるよう命じるのは,一番してはいけないことです。「友達役」の経験者の多くは,「先生が面倒くさい子どもの世話を,真面目な子どもに押し付けて逃げた」と思っています。もし先生もその子どもとしっかり付き合い,向き合っていると実感していたら,そんな受け取り方はしないと思います。

 ここでも「普通ではない」がキーワードになりそうですが,ちょっと違います。誰もが,再度自問してみる必要があるのではないでしょうか。友達がたくさんいる,誰とでも仲良くできる,友達には嘘をついたり,隠しごとをしたりしない。
 それは,本当に幸せなことですか。

堀田あけみ先生

堀田 あけみ

1964年 愛知県生まれ。
1981年,『1980アイコ十六歳』で文芸賞を受賞,文筆活動に入る。
その後,名古屋大学教育学部に入学,卒業後,同大学院教育心理学科に進学。専攻は,発達心理学・学習心理学。特に,言語の理解および産出のプロセス。
現在,椙山女学園大学教授。
また,NPO法人アスペ・エルデの会で,発達障がい児の支援も行っている。
その多方面にわたる活躍は,2012年10月から翌年の1月にかけて,朝日新聞愛知県版で40回にわたる連載で紹介された。

◆著書◆
『わかってもらえないと感じたときに読む本』『おとうさんの作り方』(海竜社)
『十歳の気持ち』(佼成出版社)
『発達障害だって大丈夫 自閉症の子を育てる幸せ』(河出書房新社)ほか多数


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