もう一度古典を読もう
「重複」はジュウフク? チョウフク?(漢字の音について)
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日常目にする多くの書籍や新聞、教科書で使う漢字は、「常用漢字表」(平成22年内閣告示第2号)というものに従っています。この表は公的な場面での漢字使用のめやすを示すものです。例えば「あう」という動詞には、「会・逢・合・遭・遇」の漢字が当てられますが、「逢う」はその表の外の漢字(表外漢字)、「遇う」はその表に掲げられていない音訓(表外音訓)です。これらの表外漢字・表外音訓が教科書に出てきた場合は、ルビを振らなければなりません。
常用漢字2136字中、小学校では1026字、中学校では残りの1110字を学習します。高校では、「嫌悪」の「
「音」はもとになった中国語の発音に近い読み方、「訓」はその意味に近い日本語の読み方、例えば「会」の音は「カイ(会場・会社など)」と「エ(会釈・会得など)」、訓は「あう」です。なお、教科書の漢字表などでは音は片仮名・訓は平仮名で書かれます。
さて、「行」には音が3つありますが、その3つとは何でしょうか?
3つ以上の音をもつ常用漢字は、2136字中、以下の17字しかありません(編集部調べ)。
宮(キュウ・グウ・ク) 行(コウ・ギョウ・アン) 合(ゴウ・ガッ・カッ)
殺(サツ・サイ・セツ) 質(シツ・シチ・チ) 女(ジョ・ニョウ・ニョ)
従(ジュウ・ショウ・ジュ) 石(セキ・シャク・コク) 弟(テイ・ダイ・デ)
度(ド・ト・タク) 頭(トウ・ズ・ト) 読(ドク・トク・トウ)
納(ノウ・ナッ・ナ・ナン・トウ) 分(ブン・フン・ブ) 歩(ホ・ブ・フ)
法(ホウ・ハッ・ホッ) 由(ユ・ユウ・ユイ)
「行」の3つの音とは、「行動・行進・実行」などのコウ、「行数・修行・行者」などのギョウ、「行灯・行火・行脚」などのアンです。
日本人が漢字を日本語に取り入れた際、漢字の発音は、中国の地域と時代により違いや変化があったため、日本に伝来した音にはいくつかの種類が生じました。
〔例〕 |
呉音 |
漢音 |
唐音 |
頭 |
ズ(頭巾) |
トウ(頭髪) |
ジュウ *表外音訓(饅頭) |
明 |
ミョウ(明日) |
メイ(明白) |
ミン *表外音訓(明国) |
行 |
ギョウ(修行) |
コウ(行動) |
アン(行脚) |
これらとは別に、漢字の
輸入 ユニュウ(本来はシュニュウ) 消耗 ショウモウ(本来はショウコウ)
口腔 コウクウ(本来はコウコウ)
どの言葉をどの音で読むかは、残念ながら一つ一つ覚えるしかありません。例えば「言語」はふつう漢音で「ゲンゴ」と読みますが、「言語道断」の時には呉音で「ゴンゴドウダン」と読みます。
タイトルに掲げた「重複」の本来の読み方はチョウフクで、明治時代にはジュウフクは誤りとされましたが、現代ではどちらで読んでもよいとされています。
同様に複数の読み方がある語は、ほかに「固執」(コシツ・コシュウ、本来はコシュウ)「施行」(セコウ・シコウ、本来はシコウ)などがあります。「礼拝」のように「仏教=ライハイ」「キリスト教=レイハイ」と使い分けられる場合もあります。
練習問題 〇=初級 ◎=中級 ☆=上級
☆次の漢字のかっこの中の音を使った熟語を考えなさい。