第17話 世の中便利に・・・!?(1)
かずき「ねぇ,ねぇ,お姉ちゃん,知ってる?」
まどか「何,またずいぶんとあわてて。どうしたの?」
かずき「世の中って,本当に便利になってるよね。お姉ちゃん,知ってる?」
まどか「何が?」
かずき「お姉ちゃんの友達にもケータイ持ってる子いるでしょ?ねぇ,今のケータイって,話したり,写真撮ったりするだけじゃなくって,今知りたいことをすぐに教えてくれるんだって」
まどか「何,それ?」
かずき「ぼくも詳(くわ)しいことはわかんないんだけど,何かマークみたいなものをケータイで写真を撮ると,それでいろいろな情報をよみとってくれて,教えてくれるんだって」
まどか「あっ,知ってる!この前,コマーシャルでやってた。チラシや地図についているマークをよみとるんでしょ」
かずき「そうそう,それだよ!」
まどか「何だっけなぁ。何とかコードっていったっけ」
かずき「もう,ぼく,ついていけないよ,世の中の流れに...」
お母さん「これでしょ,その何とかコードって」
--新聞広告のチラシを持ってくるお母さん。
まどか「そうそう,これこれ!QRコード!こんな何だか訳のわからない模様にいろいろなことが書きこまれているんだよね。世の中,頭のいい人たちが便利なものをいっぱいつくってくれるよね」
かずき「本当だよ。まったくどんな頭しているんだろ,その人たちは...」
まどか「まぁ,かずきみたいな頭でないことは確かね」
かずき「そんなこといわないでよ!本当に感心してるんだから」
お母さん「でも,本当に,最近はいろいろな記号みたいなものが増えてきたよね。お母さんの子どものころなんて,記号なんてほとんどなかったもの」
かずき「お母さんの子どものころって何年前さぁ」
お母さん「ん,十年前よ。お店で買い物をするとね,レジで1つ1つ値段を打っていくわけ!カチャ,カチャっと音をたててね。そして最後にチーンと音がして,レジの箱が飛び出してきて,『はい○○円です』って言われて,それでお金はらうの」
まどか「今は,タッチパネルでピッ,ピッ,だもんね」
お母さん「そうだわ。駄菓子(だがし)やのおばさんなんて,たくさん買うと,そろばん出してきて計算していたわ」
かずき「そろばん?」
まどか「そろばん,知らないの?」
かずき「聞いたことあるけど,見たことないんだなぁ」
お母さん「まぁ,あきれた。お母さんのころは,小学校で習ったわよ」
まどか「今は電卓があるから,ほとんど使わないよね」
かずき「電卓だって使わないよ。お店で,ピッ,ピッ,とよんでそれで合計がすぐにでてきちゃうんだもの」
まどか「そうよね。だいたいの物にこのコードがついているもんね」
お母さん「バーコードでしょ」
かずき「ばあこうど?」
お母さん「ほら,これよ」
かずき「あぁ,これか。知ってる,知ってる。見たことあるよ。ぼくのノートや筆箱なんかにもついてるよ」
お母さん「こんな線や数字だけで,いろいろなことがいっぺんにわかっちゃうんだから,本当にかずきの言うとおり,便利な世の中になったわね」
まどか「でも,何だかちょっぴりこわいよね」
かずき「何がこわいの?」
まどか「何だか訳もわからないものにいろいろな情報が盛り込まれちゃうなんて...」
お母さん「確かに...,そうよねぇ...。意味もろくにわからないのに,毎日何となく使い続けているんですものね」
--その時,かずきの眼が光る。
かずき「そんなの,やっぱりだめだよ。使うなら,ちゃんと意味もわかってから使わなきゃ...。調べようよ,お姉ちゃん!バーコードのことを」
まどか「えーっ,めんどうくさいよぉ」
かずき「何言ってんだよ。先生も言ってたよ。ただ使うのと,わかってから使うのでは,その後がぜんぜんちがうって」
まどか「そりゃ,そうだけど...。私も,ほら,...宿題もあるし...」
かずき「ずるいよ,そんなのぉ!」
まどか「えっ,えっ,...困ったなぁ...」
お母さん「やってみたら。ただし,かずきも手伝うのよ」
かずき「よーし!」
まどか「しょうがないなぁ...」
--さっさと子ども部屋に入っていくかずきと,しぶしぶついていくまどか。