第16話 1年たつと...?!(3)
--夕食のテーブルのつづき...。
お母さん「いよいよ,まどかの出番かな?」
まどか「ううん,昔ね,友達と「誕生日当て」をやったことがあるの。みんなそれぞれの好きな男の子の誕生日を知りたくてね。直接聞くのは照れくさいから,クイズ形式にするのよ。えーっと,確かこうだったわ」 〈図1〉
お父さん「えーっと,生まれた日を25倍して・・・,5をたして,それで4倍して・・・,計算をまちがえないようにしないと・・・,うん,だいじょうぶだ・・・,で,生まれた月をたして,そこから20をひくと,・・・・・・807!」
まどか「807でしょ?だから,7月8日」
お父さん「あっ,本当だ」
かずき「すごいね,おねえちゃん」
まどか「これは,タネ明かしは簡単なんだって」
お母さん「おもしろい!相手の考えていることや秘密を,それとなく聞き出してしまうことができるのね」
まどか「そうなの。だから,きっとかずきの先生の「数当て」にもタネがあるんだと思うの。でも,さっきかずきが言ったことって,きっと手がかりになると思うな」
お母さん「なぜそうなるのか,ってことまできちんとわからなくても,まずは,何かありそうだなって,探してみることって,すごく大切な気がするわ」
お父さん「1年たって,かずきも少しは立派になったってわけだ」
かずき「てへへ,照れちゃうな」
まどか「また,調子に乗って!」
お母さん「まちがえることも一つの答えだもんね。大事なのはそれを何度でも探すことだよね。お母さんも,まどかやかずきが考えていることまではわからないけど,顔と目を見ていると,何となく気持ちがわかるような気がするわ」
お父さん「オレの気持ちもわかる・・・?」
まどか「わかる!もう1本,ビールがほしい,でしょ?」
お父さん「うーん,当たり!」
注) かずきの先生の「数当て」のタネ明かしは次の通りです。
思い浮かべた2ケタの数の十の位をa,一の位をbとすると,この2ケタの数は10a+bとなります。
適当な9の段の九九を9cとすると,相手の人にやってもらう計算は,
となります。
この式を次のように変形していきます。
相手が教えてくれる数は,10×(10a+b)-9c= 100a+10(b-c)+cです。この式から,
ということがわかります。
したがって,計算したあとに相手が教えてくれた数の
となりますから,
となり,最初に相手が思い浮かべた数にもどります。
つまり,教えてもらった数の下2ケタめ以上の数と,下1ケタの数をたせば,もとの思い浮かべた数になることがわかります。(和がくり上がる場合は,十の位を1大きくする)
例えば,相手が教えてくれた数が187ならば,18+7=25となる。911ならば91+1=92となり,相手の思い浮かべた数は92となります。
これで,かずきの予想は正しかったことがわかります。
このような数の性質は,中学2・3年生の文字式をつかった学習をしていくと,理解できるものだと思います。授業の場面でも取り扱(あつか)われることがあります。
-9cを-10c+cとしたように,目的に応じて式を変形していくことは,例えば「3ケタの自然数の各位の和が9の倍数になるものは,9の倍数である」の説明のときに,100a+10b+c=99a+9b+a+b+cとして,そこから9(11a+b)+(a+b+c)としていった場面などでも使われます。
文字をつかうことのよさの一つは,このような数の性質(一見ふしぎと思えるものも含めて)を調べることを通して,その秘密を明らかにすることができたり,あるいはすべての場合についても成り立つことを簡潔(かんけつ)に表せること,といえますね。