第15話 1年たつと...?!(2)
--夕食のテーブル-。
お父さん「へぇー。以心伝心(いしんでんしん)って言うけれど,1年間いっしょに暮らしていると何でもわかってしまうんだなぁ」
かずき「イシンデンシン?」
お父さん「何も言わなくても,思っていることが伝わるってことさ」
かずき「でも,お父さんとはもう10年もいっしょにいるけど,ぼくの今考えていることわかる?」
お父さん「そりゃあ...,わかるときもある,かなぁ」
まどか「わかるわけないじゃん。お父さんは特にニブいから」
お父さん「...。き,きょうの魚,おいしいね」
まどか「かずき。かずきの先生って,きっとすごく かずきたちのことが大好きだったんだと思うよ。だから,いろいろなことをちゃんと気にかけてくれてたんだよ」
お母さん「そうね。とっても丁寧(ていねい)な先生だったわね」
かずき「うん。きびしいこともあったけど,よくみんなの気持ちを聞いてくれたし,遊んでくれたよ」
まどか「でもね。頭に浮(う)かべた数字をすべて当ててしまうなんて,いくら何でも,ちょっと信じられないのよ」
かずき「でも,本当にみんな当てちゃったんだよ」
まどか「先生は,みんなに何も聞かないで,パッと当てちゃったの?」
--考え込むかずき。
かずき「うーん。そう言えば,先生は『かずき君はこの1年間でずいぶん計算ができるようになったよね。今回の計算ももうできている?』って聞いたんだ」
お父さん「ほう,そうなのか」
まどか「それで,かずきは何て答えたの?」
かずき「『39になりました』って,答えたよ」
お母さん「でも,12なんて数字はどこにもないわよ」
まどか「他の子は?」
かずき「計算の結果はみんなに聞いてたよ。ひろき君は47で,確か ちあきちゃんは5。それから,ともみちゃんは,えーっと,593だったかな?」
お父さん「みんなバラバラじゃないか。そんなのから何かわかるのか?」
お母さん「そうなのよね。最初にかずきに聞いたとき,何か秘密があるな,とは思ったんだけど」
かずき「秘密?」
お父さん「何か秘密があるはずなんだよな...」
お母さん「でも頭に浮かべた数も,それから"9の段の答え"もみんな違う数を選んでいるわけでしょ?それでも当てられるんだから,やっぱりすごいのよね」
まどか「ねぇ,ひろき君たちの最初に思い浮かべた数も覚えてる?」
かずき「えーっ。確か...ひろき君が11で,ちあきちゃんは5,それからともみちゃんは62だったような気がする」
--考え込むまどか。
まどか「何かあるはずなのよねー」
かずき「あっ!」
お父さん「何だ!急に。魚の骨がノドにつかえるじゃないかぁ」
かずき「何だかね,ちょっとわかったんだ。ぼくの思い浮かべた数の12は,計算した結果 の39の3と9を足すとその答えになるでしょ。それからひろき君の思い浮かべた数の11は,やっぱり計算した結果 の47の4と7を足したものになっているんだ」
まどか「あっ,そうか。本当だ」
お父さん「かずき!すごいな。お前もずいぶんと さえてきたよなぁ」
かずき「でも・・・,それだと,ちあきちゃんと ともみちゃんの数は・・・何だかうまく説明できないんだよね」
まどか「偶然(ぐうぜん)だったのかなぁ・・・。でも,かずきの言っていることって,今回は何となく意外と的を射ているような気がするんだけどなぁ・・・」
お母さん「そうなのよね。だって,例えばね,お母さんが今,ある数を思い浮かべるとするでしょう。それを10倍して,好きな"9の段の答え"をひくとするでしょう」
お父さん「かずきに当てられるかい?」
お母さん「その計算結果が・・・,55になったとするでしょう」
かずき「55ってことは・・・,5+5で10。お母さんが思い浮かべたのは10?」
お母さん「当たり!10よ!かずきの年齢を思い浮かべたのよ」
お父さん「すごい・・・。かずき,やったな」
まどか「やっぱり,何かありそうよねぇ」