第7話 長方形で容器づくり(1)
お母さん「ねぇ,ちょっと聞いて?」
--困った顔のお母さん。
かずき「どうしたの?」
お母さん「この四角いプラスチックで筒(つつ)をつくるんだけど,どちらのつくり方をした方がたくさんものが入ると思う?」(図1)
かずき「そう言われても...,うーん,アの方がどっしりしていて大きいような気もするし...,でもイの方が背が高いからたくさん入るような気もするし...」
まどか「何となくアの方が大きいような気がするな」
お父さん「でも,意外にイの方が大きいかもしれないぞ」
お母さん「お母さんには,どっちも同じように見えるのよね」
かずき「うーん,どっちだろう。迷うなぁ」
--考え込むかずき。
かずき「そうだ!」
--みんなの視線が集まる。
かずき「下にラップを貼(は)って,実験してもいい?」
お父さん「かずき,本気かい?」
まどか「まぁ,でもそうだよね。論より証拠(しょうこ),だもんね。やってみたら?」
お父さん「実際にやらないで,頭で考えるのが算数のいいところなんだけどなぁ...」
お母さん「まあ,いいじゃないの」
かずき「よし,やってみよう」
--まずは,アの筒をつくって,筒の下に厚めにラップを貼り付ける。
かずき「よし,水を入れてくる!」
--慎重に蛇口から水を注いでいるかずき。
かずき「おっとっと...。よし,いっぱいまで入れて,っと。これだけ入るんだな。わかったぞ」
まどか「その水どうするの?」
かずき「こぼしてから,イの筒をつくるよ」
まどか「こぼすって,今どのくらい水が入っているか調べなくっていいの?」
かずき「だいたいわかったからいいよ」
まどか「だいたいって,そんないいかげんじゃ,2つの量の差が少ないと困るんじゃない?」
かずき「だって,アの方の水をとっておけないじゃん」
お父さん「他の入れ物に移しておけばいいんじゃないか」
かずき「それでどうするの?」
お父さん「イの容器をつくったときに,今度はその移した水を入れてみるのさ。すべて入って足りないくらいならイの方が大きいし,もしあふれてしまったらアの方が大きい,ってことになるんじゃないか」
かずき「お父さん,頭いいね」
まどか「ふつうは,それぐらいわかるのよ」
--アの筒に入った水を別の容器に移して,イの容器をつくる。
かずき「じゃ,水を入れてみるよ...」
--少しずつ水を入れるかずき。やがて,イの筒からは水があふれ出す。
かずき「わっ,やっぱりアの方が大きいんだ」
お母さん「そうかぁ。最初の長方形の長い辺を下にした方が,大きくなるのね。同じように見えたけどなぁ。でも,ありがとう。これでわかったわ」
まどか「でも,いつもそうなのかな」
お父さん「うーん,たぶんそうだろう」
まどか「面白いよね。同じ長方形からつくるのに体積が変わっちゃうなんて」
かずき「明日,学校でみんなにやってみよう。絶対にみんな考えるよ」