第8話 長方形で容器づくり(2)
--次の日の夕方―。
かずき「お母さん,お母さん!」
お母さん「何なの?帰ってくるなり,ずいぶん鼻息が荒(あら)いわね」
かずき「昨日の筒(つつ)の話。みんなに聞いたらね,結構考えてくれてたんだよ」
お母さん「あら,それはよかったわね。あなた,得意がって答えを言えたんじゃないの?」
かずき「それだけじゃないんだよ。考えている間は,みんなの意見も分かれて,結構盛り上がってたんだよ。そしたら,それを見ていた先生が,算数の授業の最後でやってみようって」
お母さん「クラスみんなで考えたの?」
かずき「そうなんだよ。『かずき君が自らいい問題をつくってきてくれた』って,もう,ボク,ヒーローさ!」
お母さん「すごく興奮してるわね」
かずき「でもね,みんなすごいんだよ。いろいろと考えるんだね」
お母さん「あなたは解く方のヒーローにはならなかったのね」
かずき「もちろん!」
--そこにまどかが帰ってくる。
まどか「かずきの声が外まで聞こえたよ。どうしたの?」
かずき「昨日の長方形の問題の話さ!そしたらね,うちのクラスの小田さんがね,実際に水を入れなくてもできるって言って,こんな説明してくれたんだ。小田さんって算数できるんだよなぁ」
まどか「どんな説明?」
かずき「四角形の長い方の辺の長さを60cmとして,短い方の辺の長さを30cmとすると...(図1)」
かずき「アとイの底は次のような形になるんだって。(図2)」
まどか「円周率を使うんだよね」
かずき「何?そのエンシュウリツって?」
まどか「算数でやったでしょ?円の周の長さと円の直径の長さとの割合!」
かずき「チョッケイ?」
まどか「うーん,もうだめだ...。円の周の長さと円の直径の長さとの割合(円周÷直径)は,どんな大きさの円でも決まっていて,およそ3.14なんだよ」
かずき「あぁ,そうか。3で計算してもいいってやつね」
まどか「でも,その小田さんって子,よく求められたね」
かずき「塾(じゅく)で習ったんだって」
まどか「そうか。あんたとは違うんだね...。それで,その後の説明は?」
かずき「それでね。計算するとね,アとイの容器にはそれぞれ次の量だけ水が入るんだって。あんまり小田さんの考えがすごいんで,ちゃんとノートに式も書いてきたんだから(図3)」
まどか「そうか。9000と4500なんだ。イの容器には,アの容器の半分しか入らないんだ」
かずき「すごいでしょ。実験しなくても,計算で求められるんだよ。しかも,こんなに簡単に。お父さんに知らせなくっちゃ!」
--まどかの瞳(ひとみ)がきらっと光った。
まどか「元の長方形の縦と横が1:2で,入る量も1:2。何か関係がありそうね」