第10話 家族で『バーチャQ』!?(1)
かずき「お父さん,これ何だかわかる?」(図1)
お父さん「何だ,『た,が,や,せ』って。だれか農業体験でもやるのかい?」
かずき「ちがうよ。よく見て!」
お父さん「『地名です』!?もしかして,並びかえたら一つの言葉になるってやつか,これは?」
かずき「当たりぃー。さあ,何だ?」
お父さん「面白そうじゃないか。地名か,これは。うーん,『た,や,が,せ』。そんな所はないよなー。えーっと」
お母さん「わかった!『せ,た,が,や』。世田谷ね」
かずき「正解!さすがお母さん」
お父さん「せ,た,が,や・・・,あーっ,そうか。本当だ」
かずき「テレビのバラエティ番組でやっているんだよ。みんな解くのが早いんだよ」
まどか「私は,まずは『や,せ,が,た(やせ型)』って読んじゃった。でも,地名じゃないからなぁ,と思って」
かずき「あっ,本当だ。何だ,答えになりそうなのは一つじゃないんだ。地名に限らなければ,他にもまだ言葉がつくれるのかなぁ」
まどか「それなら,ぜんぶ調べてみるといいんじゃない?」
かずき「そうだね。よし,やってみるか!」
--メモ帳をもってくるかずき。4枚切り取って,それぞれに,せ,た,が,や,と1字ずつ書きこむ。(図2)
かずき「これで順番に入れかえて調べていけばいいんだよね」
--かずきの作業が始まる。
かずき「せ,が,や,た。が,せ,や,た。や,た,せ,が。・・・っと,言葉になりそうなのはないな。他にも,えーっと,せ,や,た,が。が,せ,や,た・・・っと。これもダメだよね。あれっ,これはもうやったっけ?」(図3)
--次第に混乱し始めるかずき。
まどか「もう,見ていられないよ。いい方法教えてあげるよ!」
かずき「いい方法あるの?」
まどか「どれか一つ,好きな字を決めてごらん」
かずき「何でもいいの?だったら『た』!」
まどか「次に来るのは?」
かずき「・・・『せ』か『が』か『や』のどれかだよね」
まどか「そうだよね。そのうちのどれか一つを決めてごらん」
かずき「『せ』!」
まどか「次に来るのは?」
かずき「残った『が』か『や』だ」
まどか「次に『が』がきたら最後は『や』だよね。『や』がきたら最後は『が』になるでしょ。」(図4)
かずき「ふん,ふん」
まどか「つまりね,最初に一つ文字を決めて,その後に考えられるものを全部書き出すの。二つ目を決めたら,その後に考えられるものを,というように,次々と順番に書き出していくのよ」
--次々に書き出すまどか(図5)
かずき「本当だ,混乱しないね」
まどか「そうでしょ。数え落としや数えまちがえがなくなるでしょ。これ,樹形図っていうのよ」
かずき「ジュケイズ・・・。前に一度聞いたことがあるような気がするな」
まどか「中学に行ったら習うんだよ」
かずき「・・・本当だね。枝が伸(の)びて,樹のようだ」(図6)」
まどか「これは,最初が『た』の場合だったけど,最初の文字が,『せ』,『や』,『が』のものも書いてみたら。書き方はわかったでしょ?」
かずき「そうだね。結構面白そう!」
--書き出すかずき。(図7)
かずき「これで全部だよね。全部で,24個あった」
まどか「一つの樹形図で6通りだもんね。それが4つで,4×6=24」
かずき「言葉らしいのは『世田谷』『耕(たがや)せ』『やせ型』以外にはなさそうだね」
お父さん「ずいぶん書き出したな。こんなにあるんだ」
お母さん「きっと,テレビ番組をつくる人たちは,きちんと樹形図で全部調べて,答えがたくさん出てこないように確認しているんだろうね」
かずき「そうだね。でも,4文字でこれだけあるんだから,5文字とか6文字とか,文字の数が多くなればなるほど,確かめるのもたいへんだろうな...」